コロナサーフ:測定原理

ステップ1(初期表面電位Vi測定)

初期表面電位Vi測定測定表面から数mmの距離で金めっき電極(直径約6mm)を振動させ振動容量法で表面電位を測定します。
振動する電極はケルビンプローブ(Kelvin probe)と呼ばれます。
まず測定表面の初期電位Viを測定します。初期電位は基本的には測定面の金属の元素(標準酸化還元電位)に依存しますが、それに加えて表面の汚れや改質層(酸化、吸着、機械加工・洗浄等の前工程による化学反応層等)により変化します。

ステップ2(コロナ放電+電荷付与)

コロナ放電+電荷付与初期電位Viの測定が終わるとコロナ放電ヘッドが測定表面の前に移動し、ピン電極に数kVの高電圧を印加して大気中でコロナ放電を発生させます。放電により電離されたプラズマから正イオンがグリッドを通して試料表面に付与されます。電荷量は試料電流と放電曝露時間を調節することにより制御されます。これはコピー機でトナーを付着させる原理と似ています。

ステップ3(表面電位V(t)推移測定)

表面電位V(t)推移測定コロナ放電による電荷の付与が終わると再びケルビンプローブが測定表面の前に移動し、所定の推移時間の表面電位V(t)を測定します。正電荷付与による表面電位シフトdV0は、清浄な金属表面の場合は負に、絶縁性の汚れや酸化層がある場合は正になります(図1参照)。データ解析には、表面電位シフトdV0をX軸に初期表面電位ViをY軸にした表面電位マップ(図2参照)を用います。



銅板(φ30x1mmt)の表面電位推移曲線(図1)銅板(φ30x1mmt)の表面電位推移曲線Vi:初期表面電位
V(0):電荷付与直後の表面電位
Vend:最終表面電位

表面電位シフトdV0=V(0)-Vi
表面電位変化 dV=Vend-V(0)

銅板(φ30×1mmt)の表面電位マップ=(図2)銅板(φ30×1mmt)の表面電位マップ図1の銅の例では、汚れたアセトンで洗浄した試料は表面に汚染層があるためコロナ放電によって付与された正電荷はすぐに漏洩しないためV(0)は正側にシフトしその後徐々に減衰してViに戻ります。
一方、ナイタール(硝酸3%アルコール)に浸漬後、水洗いして温風乾燥した試料では、酸化層が除去され新生金属面が露出されているため、正電荷が付与されると表面内部から電子が移動し、V(0)は負側にシフトする現象が見られます。この電子移動のメカニズムはよくわかっていませんが、光刺激により表面から放出される光電子量が清浄面ほど多いのと似ていると考えられます。